・ただし書き条項はどのように作用するか
改定著作権法第37条第3項には次のような「ただし書き」があります。
「ただし、当該視覚著作物について、著作権者又はその許諾を得た者若しくは第79条の 出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、 この限りではない。」
1行のただし書きにより、法律の実効が一変してしまうことがあるので注意しなければなりません。
DAISY図書はデジタル情報ですから、コピーやネット配信が容易です。著作権者はこれにより 著作権が侵害されることを心配します。ですから、この条項を使って、すべての著作物を、 自分たちでDAISY化することにすれば、他の団体や施設でDAISY化することを抑えることができます。 たぶん、これからは、出版社自身でDAISY化する書籍が多くなるに違いありません。
実は、これこそ、これまでDAISYの普及に尽力してきた方々が望むことではないでしょうか。 DAISY化は簡単にできます。手法もほぼ確立しています。 デジタルデータもすべて出版社がもっているはずです。プロがつくれば、 質の高いDAISY図書ができるに違いありません。価格も社会的に認められる範囲になり、 まさに情報化の時代に対応したユニバーサルな出版社会が到来する可能性があります。 この意味でも、今回の著作権法改訂は画期的です。
だからといって、出版社以外でのDAISY制作の意味が失われるわけではありません。 DAISY化されない出版物は際限なく出版されます。過去の出版物となるとこれも際限がありません。 (100309)
・著作権問題
DAISY図書の動きが活発化した原因は、改正著作権法が2010年1月に施行された ことにあります。DAISYにもっとも関連しているのは第37条です。
著作権に関しては以下のサイトにくわしい解説があります。
日本図書館協会
著作権問題に関する詳しい情報があります。
日本図書館協会の
「図書館の障害者サービスにおける著作権法第37条第3項に基づく
著作物の複製等に関するガイドライン」のページ
・ナレーションの入れ方
音訳DAISYのナレーションの入れ方には以下の方法があります。
a) PRSに音訳者がマイクで録音してDAISY編集する。
b) テープ録音されたものをPRSに取込みDAISY編集する。
c) ICレコーダーでデジタル録音したファイルをPRSに取り込み
DAISY編集する。
d) テキストをスクリーンリーダーで読ませ、サウンド編集ソフトで
デジタル録音し、PRSに取り込みDAISY編集する。
e) テキストをPRSの「テキストインポート」で取込み、内部で自動的に
音声化してからDAISY編集する。
a)〜c)は、音訳者が読み上げます。
d)〜e)は、パソコンが読み上げます。
DAISY制作の最大の課題は、パソコンの操作をする人と、ナレーションを入れる人が異なる場合が 多いことです。音訳のできる方は貴重です。が、その中でパソコンを使って音訳できる方となると どうしても少なくなります。さらにその中で、画像処理ができて、htmlファイルの編集ができ、 SigtunaDAR3が扱える方となるとさらに少なくなってしまいます。このような問題を避けるには 二つの方法があります。
まず、作業を分担することです。一人ですべてをこなすのではなく、画像関係の作業、テキスト編集、 ナレーションと少なくとも3人で分担すれば負担はかなり小さくなります。 もっとも、子供でさえすべての作業を一人でしている例もあるようですから、 マルチメディアDAISYの制作はそれほど難しいわけではありません。
もうひとつの方法は、スクリーンリーダーなどでテキストを読ませてしまう方法です。
d)〜e)はそのパソコン読み上げです。人が読むような味はとても出ませんが、
すぐ読まなければならないような場合にはきわめて有力ですので、いずれこの方法が中心になる可能性が
あります。現状では、誤読やイントネーションの異常があり不完全ですが、誤読やイントネーションの
修正ソフトもすでにあります。(100301)
株式会社ナレッジクリエーション xpNavo2(しゃべるんです)22,890円
・マイク録音
このホームページのマニュアルは、基本的には、録音テープをDAISYのCDに変換する手順を示していますが、テープレコーダーの代わりにマイクを接続すればマイク録音ができます。ただし、マイク録音の場合には、パソコンがデスクトップかノートパソコンかによって、あるいはどこのメーカーかによってマイクとの相性というか、マイク録音のしやすさや質が異なることに注意してください。マイクにもいろいろな種類があり、各々ピンからキリまであります。
パソコン、特にノートパソコンはノイズの発生源というかノイズの固まりであることを覚悟した方が良さそうです。それに、登載されているサウンドボードもピンからキリまでという話があります。デスクトップ型のパソコンにしっかりしたサウンドボードを組み込んでいれば問題はないと思いますが。音質にこだわるなら、USB接続型のサウンドボード(サウンドプロセッサー、オーディオキャプチャーなどとも呼ばれる)を付ける方法があります。これもピンからキリまであります。
録音でもっとも手軽で簡単なのは、ICレコーダーでデジタル録音し、USB接続でパソコンに取り込む方法です。パソコンとICレコーダーを接続して、メニューのツールの音声インポートで音声ファイルを選択すれば取り込めます。これならパソコンから発生するノイズの心配がありません。ただし、ICレコーダーの機種によっては、変換ソフトによる音声ファイルの変換が必要です。
ただ、いつまでも音質にこだわっていると肝心のDAISY図書がつくれません。妥協が必要です。
註1:ノートパソコンでの録音は、ノイズレベルが高いので要注意です。
ノイズカットにはUSB接続のサウンドプロセッサーが必要でしょう。
USB接続のマイクなら良いかも知れませんがまだテストしていません。
デスクトップでの録音はかなり良いのですが、サウンドプロセッサーの使用でさらに良くなります。
註2:マイクの選択
福岡点字図書館(クローバープラザ)で教えていただいたもの。
サウンドプロセッサー:オンキョーSEU33GXV 15,000円程度
マイク:SONY FV820 8,000円程度
Alfeni使用機器
サウンドプロセッサー:Roland UA4FX 18,000円程度
マイク:SONY FV420 3,000円程度(感度がやや低い)
ありがとうございます
1) 簡易版マニュアルの作成をお許しくださったシナノケンシ株式会社に感謝いたします。
2) さっそくご意見をお寄せくださった富山市立図書館ボランティアのYさん、ありがとうございます。コメントをいただけるのはたいへんうれしいことです。直ちにご意見を採り入れさせていただきました(091126)。
3) 保守の都合上、画像抜きのマニュアルは削除させていただきました(091126)。
4) シナノケンシさんから間違いなどをていねいにご指摘いただきましたので訂正しました。たいへん心強いご支援、まことにありがとうございます(091127)。